承認欲求の獣

承認欲求という強い欲がある。

こいつは衣食住満ち足りているなら礼節はあってもなくても、常に現代の人々の心に溢れ出てくる。

野生の獣にはこの承認欲求がないかと言えば、社会性を持った動物の場合は野生にもこれと同じ現象があり、それが向上心となり群れを動かすこともままある。

承認欲求自体は社会性を持った獣としての人間に当然備わっていて然るべきものだし、一概に悪いものではない。しかし、これに振り回されることでその人生を大きく損なっている人間がこの世界には数多くいる。

通常の人生というものがあるなら、人間が一番最初に浴びる承認は両親からの無償の承認と愛だが、それすら受け取ることがなく育つと人は承認を渇望しその為に人でも神でも殺す。

ツールであるはずの欲が、その人を支配し人生を支配するのだ。このカラクリを見誤ることで現代社会の社会的病理に説明がつかなくなっていくのだ。

この承認欲求の獣に近づいてしまった人間に出来ることは二つだけ。認められる社会を見つけるか、認められることを諦めてしまうからだ。

人は本来自分自身のことを認めることができるし、それだけで生きることができる。過信は禁物だが、あなたを大切だと思うあなたを見失うことがあなたを傷つける大きな要因になるのだ。

他の人にされた承認なんて所詮はあなたに対する誤解であることがほとんどであることを理解することで高度情報化社会を生きる我々の息苦しい生活に、呼吸の隙間が現れるのだ。

本当にあなたのことを認めてくれる誰かを探すのも良いし、出会えたらハッピーだけど幸せの青い鳥はどこにいたのかを思い出して欲しい。